今世紀に入って実用化されたX線自由電子レーザー(XFEL)は、超高強度、超極短パルスの特性を持つことから、放射線による損傷が顕在化する前の生体高分子構造を観察することが可能です。また、生体高分子が素早く変化し反応を起こす際の動的構造を高い時間・空間分解能で捉えることもできます。我々は、SACLA(SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser)において、蛋白質などの生体高分子をターゲットとして、XFELによる動的構造の取得とその測定技術開発に取り組んでいます。
測定法としては、XFELを用いた結晶構造解析法であるシリアルフェムト秒結晶構造解析(SFX)を主軸とし、光励起など分子反応の開始方法と組み合わせた時分割SFXの技術開発に力を注いでいます。時分割SFXで得られたデータを用いると、分子が機能する様子を原子レベルの動画として可視化することができます。従来の方法では、様々なタイムスケールで素早く変化する原子の動きを可視化することは非常に困難でした。本技術で得られた動的構造情報は、生命科学研究の一層の深化に貢献するだけでなく、新たな機能性分子の設計や創製に役立つことが期待されます。